銘柄研究

コカ・コーラ(KO)が抱える税務当局との訴訟をちょっと深堀してみた

2024年第4四半期決算の記事でも書きましたが(って誰も覚えていない?)、現在コカ・コーラ(KO)は移転価格税制に関し税務当局(IRS)との訴訟を抱えています。

移転価格税制とは

移転価格税制とは、海外にある関連会社との取引において、独立企業間価格(独立した第三者の間で行われる合理的な取引価格)以外での取引を規制する制度。

例えば、グループ企業間で取引価格に制限がない場合、法人の所得などにかかる税率が低い国にある子会社に容易に利益を移転できるようになってしまうため、国内で生じた所得を海外に移転することを防止することを目的に、移転価格税制が創設された。

今回はこの訴訟に関し少々深堀したいと思います。

まず今回の訴訟の対象となっているのは、2007年から2009年の納税年度であり、裁判において税務裁判所は主に税務当局(IRS)の主張を支持しコカ・コーラに対し総額60億ドルの支払いを命じました。

これに対しコカ・コーラは利息の更なる発生を防ぐため、(とりあえず)2024年9月10日に支払いを実施。

但しこの判決を不服とし、2024年10月22日、控訴裁判所に控訴。そして2025年3月12日に主たる控訴状を提出。

一方、税務当局(IRS)も2025年7月7日に控訴状を提出しています。

2024年第4四半期において前年同期並みの利益を確保した一方、営業キャッシュフローが前期の116億ドルから68億ドルへと急減したのは、この60億ドルの支払いが主な要因であり、いまだ未確定の支払いであったため、BS(バランスシート)には計上したもののPL(損益計算書)には計上しなかったため。

訴訟が終了し、仮にコカ・コーラが全面敗訴となった場合、PLに計上されることになります。

さらに前述のとおり裁判の対象年度は2007年から2009年ですが、敗訴となればそれ以降の期間についても税務当局の主張が認められることになります。

これに関してコカ・コーラは2010年から2024年の課税年度について、その影響額を計算しており、2024年12月31日時点で利息を含め約120億ドルになると見積もっています。(2024年12月31日以後も利息は発生し続けていることには注意が必要。)

もちろんコカ・コーラとて外部の専門家と協議した中で、控訴において自身(当社)の税務上の立場が最終的に支持される可能性が高いと考えているわけですが、どう転ぶはわからない。

よってコカ・コーラホルダーとしては最悪今後120億ドル+利息分が発生する可能性があることを十分頭に入れておく、というか覚悟しておく必要がある。

では最悪の事態になったらこの銘柄から手を引くか?

と問われれば、答えはNO

ちなみに上記のとおり2023年度の営業キャッシュフローは116億ドル。

つまり仮に120億ドル+利息分の支払いが発生するにせよ、その額は(たった)1年の稼ぎ分とほぼ同額に過ぎない。

しかも発生原因がシェア低下や品質問題等、コカ・コーラのビジネスそのものから発生したものではない。

要は一過性の支払いにすぎないわけで、コカ・コーラの屋台骨に影響を与えるようなものでない、と考えています。

以上ご参考まで。

(本記事を鵜呑みにしてのコカ・コーラへの投資に当たってはくれぐれも自己責任でお願いいたします。)

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