現地時間の1月13日、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)が、「中枢神経系疾患の治療薬の開発・商品化を行うバイオ医薬品企業イントラセルラー・セラピーズ(ITCI)を発行済み全株式1株当たり現金132.00ドル、約146億ドル(約2兆3000億円)で買収することで合意した。」と発表しました。
買収手続きは今年後半に完了する予定としています。
今回の買収企業であるイントラセルラー・セラピーズですが、売上のほぼ100%がカプリタ(一般名:ルマテペロン)という治療薬となっています。
このカプリタですが、双極性Ⅰ型・Ⅱ型うつ病の併用療法および単剤療法として米国FDAに承認された最初で唯一の治療薬であり、成人の統合失調症治療薬としても承認されています。
その売上規模ですが、直近第3四半期決算の売上は約175百万ドル、通期予想665百万ドル~685百万ドルということで、ジョンソン&ジョンソンの通期予想売上(884億ドル~888億ドル)のわずか0.8%程度。
しかもイントラセルラー・セラピーズは赤字決算となっているわけで、現時点で買収によるメリットはゼロに等しい。
ではなぜ約146億ドルもの大枚をはたいて買収するのかと言えば、もちろん将来に対する期待。
現在カプリタは大うつ病(一般的にはうつ病として臨床の場で使用されている)性障害の併用療法として承認申請を米国FDAに提出しており、承認されれば、一般的なうつ病性障害の標準治療になる可能性がある。
さらに全般性不安障害およびアルツハイマー病に関連した精神病を対象とした有望な治療薬等の開発も行っており、ジョンソン&ジョンソンの現在の重点領域をさらに補完し強化することが期待されており、発表文書でジョンソン&ジョンソンは、「ピーク時の売上高が50億ドル以上となる可能性のある強力な治療薬のラインナップに加わり、今後10年間を通じてアナリストの予想を上回る売上成長をさらに確実なものにする。」としています。
尚、買収は手元現金と借入による資金調達で行うとしていますが、その割合は明らかにされていません。
ただ直近第3四半期末時点でのジョンソン&ジョンソンの現金及び現金同等物並びに短期投資合計が約200億ドルあるため、財務悪化への影響は大きくないと考えています。
この件に関して言えば、「ジョンソン・エンド・ジョンソンは、強固なバランスシートを維持し、研究開発投資、競争力のある配当、価値創造型企業買収、戦略的自社株買いといった、ジョンソン・エンド・ジョンソンの掲げる資本配分の優先順位を引き続きサポートしていく予定である。」としており、インカムゲイン投資家注目の配当についても現時点で大きな影響はなさそうです。
もちろん懸念事項がないわけではない。
今後の開発、FDAの承認はもちろんのこと特にジョンソン&ジョンソンが後発のうつ病治療薬を持っており重複する部分も多いことから、規制上のハードル、具体的には独占禁止法上の審査をクリアできるかどうかも気になるところ。
いずれにしても現地時間1月22日発表予定の第4四半期決算において、調整後の最新利益ガイダンスを発表する予定とのことで更なる情報を待ちたいと思います。
(買収の過度な期待からの投資にあたってはくれぐれも自己責任でお願いいたします)
よろしければ応援クリックお願いします。
にほんブログ村