銘柄研究

スウェディッシュ・マッチ買収によるフィリップ・モリス(PM)のデメリットを考える

5月12日付の記事でたばこ銘柄のフィリップ・モリス(PM)がスウェーデンの無煙たばこ大手、スウェディッシュ・マッチに買収提案したこと、そしてその結果同じくたばこ銘柄のアルトリア(MO)の株価がは前日から約7%もの暴落となった理由について書きました。

フィリップ・モリス(PM)がスウェディッシュ・マッチ買収 でアルトリア(MO)が暴落した理由5月11日、たばこ銘柄のフィリップ・モリス(PM)がスウェーデンの無煙たばこ大手、スウェディッシュ・マッチに買収提案したことが明らかにな...

あらためて書けば、

今回の買収提案の目的は、スウェディッシュ・マッチがメインの無煙たばこの他にタバコ葉を含まないかぎたばこの販売も行っており、米国等でも急成長中、買収によってフィリップ・モリスは、既存の販売網を手に入れることができることになり、米国での販売を強化することになること。

これまではアルトリアは米国、そしてアルトリアの旧子会社であったフィリップ・モリスは米国以外、とある程度住み分けができていた。

それが買収によって競合することになる。

つまりアルトリアは自身のテリトリー、牙城を侵されることになる。

これがアルトリアが暴落した理由。

一方、買収提案情報がリリースされるとフィリップ・モリスの株価は上昇した。

これは当然と言えば当然。

但し、投資家にとって買収による将来的なデメリットがないわけではない。

それが”80/20 company”の存在。

この銘柄を保有している方ならご存じのとおり、フィリップモリスの場合は、米国銘柄ではあるものの、”80/20 company”に該当するために配当金の大部分について外国税の源泉を免除されている銘柄となっています。

具体的には、80/20 company”というのは、ある特定の期間において総収入の80%(以上)が米国外の事業活動から発生している企業のことであり、フィリップモリスはその収入のほとんどを米国外の活動から得ており、”80/20 company”に該当しています。

その結果、配当の大部分が源泉税を免除されている。

具体的には2022年の場合国外の事業活動の割合が95%であり、課税される部分は全体の5%にしか過ぎない。

つまり配当総額に対する税率は、5%×源泉税率の10%=たった0.5%ということになります。

ということで、フィリップ・モリスはNISAにうってつけの銘柄。

ご存じのとおりNISA取引の最大のメリットは配当金(や売却益)が非課税になること。

つまり所得税と住民税を合わせた20.315%がかからない。

但し非課税になるのはあくまで日本国内で課税される部分のみ。

米国株の場合、通常アメリカ(側)で10%の外国税が課税されるわけですが、この分は非課税にはならないのです。

しかしフィリップ・モリスの場合は上記のとおりこの外国税額の税率がたった0.5%で済む。

これが非常に大きい。

と前置きが長くなりましたが、今回の買収によって将来的にフィリップ・モリスが米国での売上を伸ばしたら何が起きるか?

そう、国外売上の割合が80%を下回り”80/20 company”に該当しなくなる。

つまり、現在の0.5%の外国税額が通常の米国銘柄と同様、10%になって(ある意味増税されて)しまう。

これが「デメリットがないわけではない。」と書いた理由。

もっともそんな事態になればフィリップ・モリス全体の売上は大きく増加し、その結果配当も大きく増えるでしょうから結局はデメリットと言えないのかもしれませんが。

ただこれ、覚えておいて決して損はないと思っています。

以上、ご参考まで。

(買収を予定している”80/20 company”への投資にあたってはくれぐれも自己責任でお願いいたします。)

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POSTED COMMENT

  1. 屯倉 より:

    なるほど盲点でした。
    ありがとうございました。
    最近配当率も下がり別銘柄でも問題なくなってきてしまいますね。20%を超えてくるかが肝ですよね、、、

    所で所得税と住民税で申告方法を分ける節税策が政府により禁止されましたが、続いて政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案が出ました。
    そこでついに源泉徴収でも国民健康保険料を取られる法改正の案が出てしまいました。
    結局最後は確定申告で還付を受けないと30%以上の税金(国保料)を収めないといけなくなる時代が来そうです(源泉徴収の意味がわかりません)。
    岸田政権になってまだ数年だと思いますが急激すぎてついていけず、リタイヤ生活の資金計画も大きく狂ってしまいました。
    株もリスクがあるのに税制の優遇も無くされ生活を一段切り詰める必要が出てきてげんなりです。

    • naobito より:

      屯倉さん
      こんにちは。
      75歳以上に対する健康保険料については株式の譲渡所得や配当所得も加味するという話もありますし、岸田さんは投資家にうらみでもあるのでしょうかね?
      個人的には早く政権交代してくれないかと願っているのですが、(なぜか)支持率が高いのが悩みです。(苦笑)

  2. ひろー より:

    こんにちは。

    僕自身はすでに前々から申告分離課税方式が廃止になり、全て総合課税に一本化になるのではないか、労働所得も金融所得も最高税率が55%ほどになるのではないかと書いてきています。

    どうやら何故かそんな方向性にいきそうですよね。
    自民党の誰が総裁となり、首相になってもこの流れは変わらないと思います。

    僕自身はそうなる前に一旦株式やREITは利確してしまって、NISA口座のみインデックス運用する形にしそうです。

    • naobito より:

      ひろーさん
      こんばんは。
      総合課税一本化となると事態は深刻ですね。
      一本化したらせめて税率を下げてくれ、と思うのは当方だけでしょうか?

  3. 屯倉 より:

    先日金融所得増税は優先課題ではないと言っていましたが今日岸田首相は国会答弁で年末に税制調査会で検討を行うと180度違う発言をしていました。
    NISAを拡充すると発言した時点で証券業界との談合も済んでいたのかもしれません。
    サラリーマンは給与増になり岸田総理は人気がありますが、結局物価上昇のトリガーを引いてしまい、帳消しどころかマイナスだと思います。
    自民党は55歳ぐらいからの役員定年、再雇用での賃金低下、非正規雇用の増加も引き起こしてしまっています。
    一番の被害者は支持層である労働者層と客観的に見て思いますが、選挙対策がうまいです岸田総理は。
    でも、これでは国民はどんどん疲弊し少子化が進み国力の減退は避けられないですよね。
    僕自体も将来の消費を抑えるよう修正しました。
    PB黒字化の為に増税を繰り返しても最後は増税余地もなくなるし、そのときにはもう打つ手がない状態になる気がします。
    とにかく参院選で一票を投じますがどの党も増税とばらまきは変わらない気もします。
    とにかくも1国民としては決定事項は変えられないのでこういう国に住んでいる以上消費を減らして対応していくしかなく、缶ジュースも買えない日々となりそうです。

    • naobito より:

      屯倉さん
      年末に税制調査会で検討を行うと言っていたのですか、、、
      まあ現在の財政状況では増税なくして国はもたないのですから致し方ないと言えばそれまでですが。
      海外移住を真剣に考えねばならなくなるかもしれません。

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